当院でのFIP(猫伝染性腹膜炎)治療について
こんにちは、ねこのクリニック浦和です。
今日は当院で行なっているFIP(猫伝染性腹膜炎)の治療法についてお話しします。
(症状・診断など病気の説明については今回のブログでは割愛します。)
FIP(猫伝染性腹膜炎)は、長年「不治の病」として知られていました。かつては、ステロイドやインターフェロン、炎症に対してのお薬などで治療を試みたものの、功を奏する事なく多くの子が亡くなってしまう病気でした。かつて治せなかった病気の子が治って元気になっていくのを見るのは獣医師として大変嬉しいことです。
未だ日本での承認はないものの、ここ数年で海外では承認薬が出て論文も増え、実際の治療例も増えてきて信頼たる情報が得られるようになってきました。
とは言えまだまだわかっていない事も多い最新の治療ですので、当院でも慎重に治療にあたっております。
【使用薬剤】
当院では現在、イギリスおよびオーストラリアで動物用医薬品として承認を受けてFIP治療に使用されているGS製剤の錠剤と、人のコロナウイルスに対しての治療薬であるモルヌピラビルのカプセルでの治療を行っています。動物への効果や副作用の情報が多く存在しているGS製剤での治療を第一選択としてお勧めしておりますが、費用等の面からモルヌピラビルによる治療を選択する事も出来ます。この場合、当院で体重に合わせてカプセルに調剤してお渡しすることになります。(毒性等の関係でカプセルに入れたものは中身を出さないようにお願いしています。)
【通院期間】
順調に行って投薬期間は12週間(およそ3ヶ月)です。
投薬終了後も再発の有無等を定期的にモニターしていきます。
臨床症状、各種検査からFIPが疑われた子に対し、飲み薬で治療を始め、薬の効果と副作用のモニターのために、血液検査、エコー検査などの検査を定期的に実施していきます。
【費用】
費用は、その子その子の病状や経過により必要な検査、通院頻度が変わることや、体重、症状により薬の投与量が変わること、薬代の仕入れ値の流動等で一概には言えませんが、投薬期間中かかる金額のおおよその目安として、4キロくらいの体重の子でGS製剤の治療で50万円程度、モルヌピラビルの治療でおおよそ15〜20万円となることが多いようです。
【当院でのFIP治療に関する注意点】
●当院は入院の対応をしておりません。また、FIPの注射薬のご用意はありませんので、内服が可能な状態の患者様のみ、対応させていただいております。(症状が重度で全身状態が悪い子は入院可能な設備での治療をお勧め致します。)
●海外から輸入しているお薬を使用しているので、タイミングによっては在庫がない場合もあります。診察代、検査は保険適応、薬代はペット保険適応外となることが一般的です。
●電話での病状や費用のご相談は行っておりません。
他の病院でFIPと診断を受けたけれど、まずは猫ちゃんを連れてこないで相談したいという方は、検査結果を持って獣医師との面談(カウンセリング)が可能です(有料)。ご希望の場合はネット予約ではなくお電話で予約ください。
【症例】
症例①
3歳齢 雄 主訴;嘔吐、下痢、体重減少
〈検査所見〉
血液検査;TP 高値 グロブリン高値 軽度貧血
腹部エコー;腎形態異常、腹腔内リンパ節腫大
FIPドライタイプを疑い、治療を開始、投薬開始後症状良化。投与後1ヶ月でTP正常値に低下、3ヶ月投薬継続。3ヶ月後には全ての異常値、エコー所見正常化。
投薬終了後、経過観察中。現在のところ再発なし。
症例②
11ヶ月齢 雄 主訴;食欲不振、腹囲膨満
〈検査所見〉
血液検査;TP高値 グロブリン高値 白血球増多
腹部エコー;腹水貯留、腹腔内リンパ節腫大
腹水コロナウイルスPCR検査 陽性
FIPウェットタイプを疑い、治療を開始、徐々に回復が見られ1ヶ月で腹水消失、3ヶ月投薬継続。
投薬終了後、経過観察中。現在のところ再発なし。
FIPについてお悩みの方はご相談下さい。